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再審法改正に向けた速やかな議論を求める意見書

[2025年2月25日]

再審法改正に向けた速やかな議論を求める意見書

えん罪は、犯人とされた者やその家族の人生を狂わせる人権侵害であり、あってはならないことである。それゆえ、我が国では憲法において多数の刑事手続関連条項を設け、刑事訴訟法等の法律を充実させることによって、えん罪の発生を防止しようとしてきた。しかしながら、人の運用する制度である以上、ときに誤判が生じるおそれは払拭できず、誤判により生じたえん罪被害者は迅速に救済されなければならない。


誤判により有罪判決を受けたえん罪被害者を救済する再審制度については、刑事訴訟法(第4編再審、以下「再審法」という。)に規定が設けられているが、再審が認められることは稀であり、えん罪被害者の救済は容易には進んでいない。


その要因として、日本弁護士会連合会の「えん罪被害者の迅速な救済を可能とするため、再審法の速やかな改正を求める決議(令和5年6月16日決議)」では、刑事訴訟法に再審に関する規定がわずか19条しか存在しないという制度上の問題があり、再審請求手続に関する詳細な規定が存在しないために、個々の裁判体の裁量があまりにも大きいことが指摘されている。その中でも特に重要な課題として、

1、再審請求手続において証拠開示規定が存在しないこと

2、再審開始決定に対する検察官の不服申立てにより審理が極めて長期化していること

3、再審請求手続における手続規定が整備されておらず、請求人の手続保障が 十分になされていないこと

の3点が挙げられている。


このうち、再審請求手続における証拠開示については、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)の制定過程において、再審請求手続における証拠開示の問題点が指摘され、同法附則第9条第3項において、政府は同法の公布後、必要に応じて速やかに再審請求手続における証拠の開示等について検討するものと規定されているにもかかわらず、今なお制度化は実現していない。


また、再審開始決定に対する検察官の不服申立てについては、不服申立てによって、更に審理が長期化し、えん罪被害者の救済が遅延することが指摘されるとともに、検察官は不服申立てによらずとも、再審公判において主張の機会が保障されており不都合はないとの見解もある。


そして、再審請求手続における手続規定に関しては、再審法に規定が少なく、とりわけ、審理の在り方については、明文の規定が存在せず、裁判所の広汎な裁量に委ねられている。そのため、裁判所の訴訟指揮により大きな差が生じるという問題があり、再審請求手続における手続規定を整備する必要があるとの意見がある。


近年、再審事件の動向に関する報道により、再審やえん罪被害に対する社会の関心が高まり、日本弁護士会連合会などから再審法の問題点も指摘されている中で、地方議会においても再審法改正を求める意見書が採択されている状況にある。


ついては、国におかれては、えん罪被害者を迅速に救済するため、再審法改正に向けた議論を速やかに行うよう強く求める。


以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。



令和6年6月28日


衆議院議長 様

参議院議長 様

内閣総理大臣 様

法務大臣 様

内閣官房長官 様




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